矯正歯科治療で生じうるリスクや副作用について
ワイヤーを用いた矯正歯科治療の場合
矯正歯科治療中は舌の動きがスムーズにいかない場合があり、発音しづらいなどの症状がでまますが、数ヶ月で慣れる場合が多いです。
矯正歯科治療中に装置が当たることで頬の内側に傷がついたり、口内炎になったり、歯の移動に伴う痛みを感じることもあります。この場合は必要に応じカバーとなるワックスで対処する場合やその他の対処策を行う場合があります。
一般的なワイヤー矯正は、歯の表面に器具を装着するためワイヤー色が目立ちますので、矯正をしていることがわかるというリスクがあります。
矯正装置を装着した直後や、ワイヤーを交換した直後には痛みを程度に差はありますが、痛みを感じます。これは数日でおさまる場合が多いです。また冷たいものを飲んだときにしみる症状がでる場合がありますが、これもほぼ数日で改善されることが多いです。
マウスピース型矯正で生じうるリスク
元来、取り外し可能な矯正装置なので歯磨きはしやすいのですが、基本的に長時間マウスピースを装着する為、歯磨きが十分できていない状態での装置装着は虫歯や歯周病に結びつきます。間食や甘味料の入った飲料の摂取を控え、矯正歯科治療に適合するブラシでのブラッシング指導を歯科医師より受けて、適切にブラッシングを行わねばなりません。さらに歯科医院で歯をクリーニングすることや、フッ素塗布などのケアも場合により必要となります。
歯の移動量が大きなケースには適用できないことがあります。また抜歯の必要がある歯並び、歯のねじれがある、奥歯の咬み合わせの調整が必要なケースなどといった場合は、マウスピース矯正は適切な選択とならない場合もあります。その際は他の治療方法と比較検討します。
マウスピースは就寝時にも装着しておく必要があるため、強い歯ぎしりがあるとマウスピース自体が破損しますし、就寝時だけでなく、日中に歯を食いしばる方などは治療に不向きとなります。
自分自身で外すことができるため、歯科医師の指示に従わずに、外しがちになる時間が多いと治療はうまくいきませんので、治療効果は期待できません。
抜歯・麻酔について
歯並びを治したい箇所に歯を並べる十分なスペースがない場合は、抜歯を必要とする場合もあります。またその歯自体の健康上には問題のない歯の抜歯の場合もあります。これについては十分な根拠、抜歯理由を説明し、納得の上、抜歯をさせていただきます。また抜歯をすべき症例で無理に非抜歯治療を選択した場合は口元の計上などに不満が残る場合もあります。
抜歯する場合は麻酔注射を行います。麻酔薬の成分には心拍数、血圧を上げる作用があるものもあるため、心臓や血圧に問題がある方が使用すると、動悸、血圧上昇を起こす場合があります。また、頬を噛んでもわからなかったり、熱いものを飲んでもわからなかったりするため、麻酔直後は口腔内を傷つけるリスクがあります。麻酔によって悪心、嘔吐、アレルギー反応が起こることもあります。
金属アレルギー
ワイヤー矯正装置さまざまな金属の合金素材ですので、金属アレルギーのある方やアレルギーの懸念のある方は、皮膚科で行われているパッチテストをうけて、アレルギー材料を特定する必要があります。矯正装置を装着したあとに、アレルギー症状が起きた場合は、歯科医師の指示を仰いでください。なお、金属アレルギーの方用の金属を使用しない矯正歯科治療方法も選択にあります。
むし歯や歯周病
矯正中、虫歯ができる、もしくは悪化する場合があります。状態によって、治療終了後に虫歯の治療をする場合と矯正歯科治療中でも器具を一度外して虫歯の治療を行う場合があります。
矯正歯科治療中、矯正装置の周りなど、歯磨きしにくい部分ができるため、虫歯や歯周炎のリスクが高くなります。歯科医師の指示に従い、十分なブラッシングをしてリスクを抑えましょう。歯科医院で歯をクリーニングすることやフッ素塗布などを勧める場合もあります。
矯正前にはむし歯や歯周病の治療を先立って行う必要があります。
治療終了後のこと
矯正終了後に矯正箇所が程度にばらつきはありますが、元に戻る場合があります。
矯正終了して、かえって咬み合わせが悪く感じる可能性もあります。頭痛、肩こりを招く事があります。咬み合わせのバランスが崩れることで口が開けにくかったり、食事中に痛みが出る顎関節症を発症したりする場合があります。かみ合わせに問題あり場合は、かみ合わせの治療を行います。
矯正歯科治療中、頭痛、首・肩のこり、倦怠感、吐き気など不定愁訴が起こる場合があります。
治療中と治療後の見た目の感じ方には個人差が大きくあらわれます。歯科医師との見解の相違も起こりえます。
矯正力が強すぎる場合や原因不明で歯の根が短くなる「歯根吸収」が起こるリスクがあります。
歯や骨の状態、歯の動きを妨げる何らかの原因があった場合、虫歯や歯周病の発生や治療期間が長くなる場合があります。
矯正歯科治療では、歯肉が下がる歯肉退縮があります。特に切歯(せっし:上下の前歯4本)、歯の凸凹が大きい箇所などはそうなる事があります。
個人差により治療期間が三年を超えて数年かかることがあります。
治療中は固いものをかみ切ることはできなくなります。また、ガムや餅など、装置に引っかかるものは装置を壊す、または装置に引っかかって清掃しにくいため、食べられなくなることもあります。
装置が壊れることがあります。すぐに医院に来ないといけない場合や数日ははそのままでもいい場合などありますので、歯科医師に相談してください。
なかには治療にかなりのストレスを受ける患者さんもいます。
患者様が、取り外しできる矯正装置や補助的な装置(患者さんにけけてもらうゴムなど)の装着時間を守っていなかったり、定期的な来院ができなかった場合は、治療期間が延びる場合や治療効果が不十分な場合があります。
特殊な噛み合わせ、骨と歯の癒着などの原因、特殊な歯の形状の場合は、治療期間が長くなる場合やうまくいかない場合があります。
舌で歯を押す癖や、歯並びに悪影響をあたえる癖が改善されない方は、治療期間が延びる場合があります。
矯正歯科治療で歯を動かして歯並びを整える「動的治療」を終えて歯並びが改善されても、歯は元の位置に戻ろうとする傾向があるため、一定期間動かした歯をとどめておく保定が必要です。歯科医師が指示する保定期間中も歯科医師の指示に従って保定装置の着用、定期の来院はまもってください。